理事長ご挨拶

この度、日本夜尿症・尿失禁学会の理事長を拝命いたしました、京都府立医科大学 小児医療センター 小児泌尿器科の内藤泰行です。これまで学会員の皆様、そして歴代理事長のご尽力により、本学会は着実に発展してまいりました。その舵取りを担わせていただくこととなり、身の引き締まる思いとともに、大変光栄に存じます。
日本夜尿症・尿失禁学会は、1990年に「日本夜尿症研究会」として発足し、1995年には「日本夜尿症学会」と改称されました。さらに、夜尿症のみならず昼間尿失禁への取り組みが重要であるとの認識から、2022年より「日本夜尿症・尿失禁学会」と改名し、現在に至っております。
今後も学会としてさらなる発展を目指すとともに、小児診療全体において成熟した学会としての役割を担ってまいります。少子高齢化が進む中、子どもたちやそのご家族、そして私たち医療従事者を取り巻く環境は絶えず変化しています。こうした変化を敏感に捉え、時代の流れとヒトに寄り添った夜尿症・尿失禁診療の実現を目指してまいります。
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◆ 学会のさらなる発展のために
〈若手医師やプライマリケアを担ってくださる医師の参加促進〉 -
夜尿症や昼間尿失禁の診断・治療において質の高い医療を提供できる若手医師やプライマリケア担ってくださる医師の育成は、今後の学会の発展にとって極めて重要な課題です。本学会ではこれまでに、日本医療機能評価機構のEBM医療情報事業(Minds)に準拠して作成した『夜尿症診療ガイドライン2016』および『夜尿症診療ガイドライン2021』を発刊し、診療における新しい知識の提供に努めてまいりました。今後もさまざまな方法を講じて、夜尿症・尿失禁診療に携わる医師の育成事業を推進し、up to dateな発信を通じて魅力ある学会づくりに努めます。
- 〈関連学会との連携強化〉
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夜尿症・尿失禁の診療には、関連診療科の先生方との連携が不可欠です。本学会にはまだ専門医や認定医制度はありませんが、日本小児科学会、日本泌尿器科学会、日本小児泌尿器科学会、日本小児腎臓病学会、日本小児心身医学会、そして日本小児外科学会など、様々な関連学会と連携し、よりよい夜尿・尿失禁の診療の実現のための環境づくりの提案を行ってまいります。
- 〈研究の推進〉
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残念ながら夜尿症や昼間尿失禁の研究は依然として発展途上であり、治療成績の向上には基礎医学と臨床医学の両面からの研究が不可欠です。現在、学会主導で行っている研究を継続するとともに、若手医師への研究支援や論文作成支援事業も積極的に推進してまいります。
- 〈国際化の促進〉
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「小児の夜尿症・尿失禁」を対象とする国際学会として、International Children’s Continence Society(ICCS:国際小児禁制学会)があります。ICCSとの国際交流はもちろんのこと、小児科、小児泌尿器科、小児外科関連の国際学会との交流も、日本の診療を世界水準に引き上げるだけでなく、日本らしさを再認識し、さらなる発展につなげるうえで重要であると考えています。
- ◆ 子どもたちとそのご家族に安心を届けるために
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夜尿症や昼間尿失禁は、子ども本人のみならず、ご家族にも心理的・社会的な負担をもたらすことが知られています。残念ながら、こうした疾患に対する理解は、医療従事者のみならず、子どもたちを取り巻く教育現場や地域社会においても、まだ十分とは言えません。
そこで本学会では、一般の方々や教育現場の皆様に向けて、正しい知識と情報を継続的に発信し、理解を深めていただくための啓発活動に力を注いでまいります。
- ◆ 最後に
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これらの目標を達成し、学会が今後も発展していくためには、さまざまな診療科の次世代を担う若い力が必要です。夜尿症・尿失禁診療に情熱を持って取り組んでくださる若い先生方が、一人でも多く仲間に加わってくださるような、魅力ある学会づくりを目指してまいります。
2025年 夏
日本夜尿症・尿失禁学会
理事長 内藤 泰行
(京都府立医科大学 小児医療センター 小児泌尿器科部門長)